ドミニオンの功罪 [雑感]

ドミニオンは良いゲームだと思う。が、僕にとっての最良ではない。
現在のボードゲーム界(主にカードゲーム)は、ドミニオン前とドミニオン後と言っても良いほど環境が変わってきていると思う。

ドミニオン前、カードは1つ、もしくは複数の共通の山札から引くゲームがほとんどだった。
が、ドミニオン後はプレイヤー1人1人が自分の山札を持ち、自分のデッキを組んでいくゲームが一気に増えた気がする。国産物でも、たんとくおーれやばるばろっさ、くにとりっ、と拡張を含めいくつか出ており、これが海外に目を向ければ、さらに多くのタイトルがあるだろう。

カードゲーム業界は過去、マジック・ザ・ギャザリング(以下MTGと略す)の登場によってトレーディングカードゲーム(以下TCG)というジャンルを作り隆盛を誇った。プレイヤーが自分の山札を膨大な種類のカードの中からセレクトして作り、それを元に対戦する、というアイデアは瞬く間に世界に広まり、いくつものTCGが作られていって消えていった。

TCGはプレイヤーには優しくないゲームで、が、メーカーにとっては、毎年拡張セットを出すことによって収入がある程度見込める、というものだ。毎年レギュレーションを変えることにより、使えるカード、使えないカードが変わって行く。こうすることで、プレイヤーは拡張セットを買い続けることを余儀なくされ、新しい環境は確かに面白さを提供してくれるが、けして安いものではない。

古参、新参、雑多な人が互いのデッキ構築技術、プレイスキルで戦う。そして、遊ぶためには最低自分を含め2人いればよい。マルチプレイゲームと違い、最少人数で遊べるので、、システムとして非常に現代にマッチしていたといえるだろう。

さて、こういった環境から離れるには、大きな決意がいる。仲間からの離脱を意味するこういった現役引退はTCGにおいては避けては通れない(もちろんいまだ現役で遊んでいる人もいるかもしれないが)。

そんな時、このドミニオンは現れた。
必要なものはベースとなるセットのみ。ルールはシンプルで、場のカードを入れ替えることにより何度でも遊べて、プレイ時間もそんなに長くない。繰り返しプレイにも耐え、必要と思わなければ、拡張セットも買う必要がない。これはカードゲームのエポックメイキングといえる。

ドミニオンのすごいところは、基本のカードセットだけで何度でも繰り返しプレイを楽しめることにある。
25種あるカードサプライは毎回ランダムで10種選ばれ、それがゲームの舞台となる。これがミソで、1ゲーム遊ぶ間、残りのカードは使わないのだ。今までのゲームでは基本的に無駄な、使わないカードなどなく、毎回全てのカードをゲームで使うのだから、何度も遊べるというもの。サプライの組み合わせはほぼ無限といってよく、展開もさまざまだ。
もうひとつすごいところは、プレイ時間の短さ。普通のゲームなら余程軽いものでなければ45分程度はかかるもの。これが、ドミニオンになると、なれれば20分程度で1ゲーム終わってしまい、逆にカードの準備の方が時間がかかるくらいだ。

ドミニオンは、ドイツボードゲーム業界において、初めて3冠に輝いた。
これは製作側にも影響を与えたに違いない。ゲーム業界では新しいアイデアがヒットすると、必ずフォロワーを生んできたからだ。
こうして、ドミニオン後雨後のたけのこのごとく、大量の亜流が生まれることになる。

ドミニオンの功績は、新しいゲームシステムを作り出したこと、それも、短時間で遊べて飽きの来にくいものを。

そして、ドミニオンの罪は、言葉にしにくいが、短時間で繰り返しプレイできるゲームこそが良いゲーム、という印象を周りに与えているところ。亜流が多く生まれることは、それを表す最たるもの。

一つの傑作は多くの後続を生む。それらは、もちろんその傑作を追い越さんとするために生まれるのだろうが、新しいもの労なくして生まれるものではなく、借り物のシステムがプレイヤーに飽きられれば寿命を短くするだけだ。

面白く、新しいものを作るのは難しい。が、今あるシステムに手を加えて出すだけの状況になるのは喜ばしくない。
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